和傘について
和傘と洋傘の違いを徹底解説
和傘と洋傘の違いを徹底解説|和傘の大きさを把握して日常を楽しもう
和傘と洋傘には、素材や構造、使い方に多くの違いがあります。和傘は竹や和紙を使用するなど、自然素材ならではの美しさと日本の伝統技術を受け継いでいます。
一方で、洋傘は金属やナイロンなどの人工素材で作られているため、値段の手軽さと高い機能性が魅力です。
この記事では、和傘と洋傘の違いのほかに、和傘の種類ごとの大きさについて詳しく解説していきます。
和傘とは
和傘は、6世紀頃に中国から伝わり、竹と和紙を使って作られる日本の伝統的な傘となりました。当初、和傘は高貴な方の日除けや魔除けとして利用されており、開閉ができない作りのほか、付き人が持つなどといった権力の象徴でもありました。
その後、江戸時代で技術が進化していき、ろくろやハジキといった開閉の仕組みが開発され、近年見かける和傘となったのです。
和傘の種類として「番傘」と「蛇の目傘」が有名であり、番傘は骨が太くて頑丈な作りが特徴です。
一方、蛇の目傘は白く丸い模様がヘビの目に似ていることから名付けられ、細身で繊細なデザインが特徴です。
このように、和傘とは時代の変化を傘1本で感じられる伝統的な職人技となります。
「和傘の詳しい歴史は」こちら
洋傘とは
洋傘とは、日常的に私たちが利用している傘であり、西洋で発展した技術を活用して作られています。洋傘の最大の特徴は、金属製の骨組みに防水加工の布やナイロンを張ることで、耐久性と機能性を高めている点です。
形状が動物のコウモリに似ていることから、明治初期には「こうもり傘」と呼ばれていました。
洋傘は、1854年(安政元年)、米国のペリーが黒船で来航した際に普及したと言われ、当時の黒い洋傘が「蝙蝠傘(こうもり傘)」として紹介されたことで、幕末の日本でその存在が知られるようになりました。
その後、1868年(明治元年)に輸入洋傘の販売を始めた「仙女香坂本商店」が、1872年(明治5年)に初の国産洋傘を製造。これを機に、洋傘は日本国内で徐々に普及していきました。
洋傘は安価で手に入れやすいものなどが多く、近年では軽量化や耐水性、風に強い構造などが進化し、デザイン性も向上しています。
このように洋傘は、時代の変化に素早く適応できるものとなっています。
和傘と洋傘の違いとは
ここからは、和傘と洋傘の素材や骨数などを比べながら、和傘と洋傘にはどのような違いがあるのか、ご紹介していきます。和傘と洋傘の違い①材料
和傘と洋傘の大きな違いは、使用されている材料にあります。洋傘は、ビニールやポリエステル、スチールといった人工素材で作られるのが一般的です。一方、和傘は和紙や竹などの自然の材料を使用しており、伝統的な技術によって作られます。
和傘の材料の和紙は、手で紙をすいている(手漉き)された繊維から作られるため、通気性に優れているのが特徴です。
また、和紙と竹の組み合わせによって美しいフォルムを作れるのも、和傘の特徴と言えるでしょう。
一方で洋傘は、人工素材で作られていることから大量生産ができ、手に届きやすい価格帯のものから存在します。近年では、デザイン性も重視されていることから、日常使いとして重宝されています。
和傘と洋傘の違い②骨数(親骨)
次に、和傘と洋傘は「骨の数(親骨)」が大きく違います。 和傘は、大きさによって違いますが、少なくても16本から最大で50本前後もの竹骨を使用し、和紙をしっかり支える構造となっています。 一方で、洋傘は一般的に8本の骨を使用し、その針金の力で生地を張っています。そのため、和傘は末広がりのすっきりとした形状を描くのに対し、洋傘は丸みがかったシルエットが特徴です。和傘と洋傘の骨数が、ここまで大きく違う理由は材料にあり、和紙自体の強度を補う目的から竹骨の数を増やして耐久性を上げています。
和傘と洋傘の違い③生地の畳み方
和傘と洋傘では、生地の畳み方にも大きな違いがあります。
洋傘は骨の外側に生地を巻き付けるように傘を畳むのが一般的で、よく他の人の傘が洋服にあたり、服が濡れてしまった経験も多いのではないでしょうか。
これは、濡れた生地が折り畳んだときに外側に出るために起こる現象です。
一方、和傘は骨が外側に出て生地が内側に畳まれる仕組みになっており、濡れた部分が内側に隠れるため、周囲を濡らさないという配慮がされています。
このような設計になった理由として、昔からある「心遣い」によって、このような構造になったと言われています。
和傘と洋傘の違い④デザイン性
和傘はシンプルなデザインから熟練の技が光るデザイン、さらにイベントに合わせた柄など多種多様なデザインが施されています。一方で洋傘は、コラボ商品なども多くありますが、和傘のような細かなデザインを施しているものは少ないと言えるでしょう。
和傘と洋傘のサイズ表記との違い
和傘を1本だけでも持ちたいという方も多いと思いますが、サイトなどを見ても「自分に合ったサイズなのか、イメージしづらい」という悩みをお持ちではないでしょうか。普段から利用している洋傘を基準にしても、和傘と洋傘では、サイズの表記方法が全く違うため、購入時には注意が必要です。
洋傘は一般的に親骨の長さでサイズが表記され、男性用は65cm以上、女性用は60cm以上のものが主流です。
一方、和傘は構造上、同じ親骨の長さでも広げた際の面積が洋傘よりも広くなるように設計されています。これは、着物の帯や袖を雨から守るという実用的な目的に基づいた工夫です。
そのため、全長は約70~80cm、広げたときの直径は約110cm前後と、成人男性なら扱いやすいサイズ感で、広範囲をカバーしてくれることでしょう。
また、畳んだときもコンパクトになりやすいサイズは、直径約76cmから約106cmで、女性にもお子さんにもおすすめサイズです。
利用シーンにあった和傘の大きさとは?
ここからは、利用シーンに合わせた和傘の大きさについてご紹介していきます。直径86cm前後 :小回りがきく日傘サイズ
直径86cm前後の和傘は、主に日傘として利用されているサイズです。可愛らしいサイズ感で女性人気も高く、そこまで重くないことから日常使いもできます。
また、乾燥時の重さは約350g程度と軽いため、長時間持ち歩いても疲れにくいのも嬉しいポイント。
お祭りなどの人混みが多いイベントでも小回りが利きやすく、お子さんのサイズ感にもぴったりなことから、親子で和傘を楽しみたい方にもおすすめです。
直径90cm前後:持ち運びがしやすい踊り用傘サイズ
直径90cm前後の和傘は、主に踊り用として利用されているサイズです。絹傘や小番傘などに採用されるサイズ感であり、コンパクトでありながらいろいろなデザインを楽しむことができます。
また、日傘同様に長時間の使用でも疲れにくくなっています。
商品によっては折りたたむことで全体の長さが短くなるため、洋傘と同じように持ち運ぶことが可能です。雨天時でも雨に濡れない程度の直径があるのも嬉しいポイントです。
直径105cm前後の蛇の目傘:おしゃれして楽しむ標準サイズ
直径105cm前後の和傘は標準サイズとされており、蛇の目傘などに採用されています。このサイズは、デザインが豊富なことから和装や洋装を問わずコーディネートしやすく、男性にとっても扱いやすいのが魅力です。
また、雨の日でも濡れにくく「雨天時には絶対に持ち歩きたい!」という方におすすめのサイズです。
撮影用にも適しているサイズ感であり、背景を隠したい場面に被写体が持つことで、余計なものをフレームから外すことができます。
このサイズの和傘は、乾燥時で約500gの重量感があり、使い勝手と美しさのバランスが取れたおすすめサイズと言えます。
直径105cm前後の番傘:和傘の美しさを全身で感じられるサイズ
直径105cm前後の和傘は、大型で重量感があるのが特徴です。このサイズは番傘に採用されており、持ち手が太いなどの特別な雰囲気を味わうことができます。
また、荷物が多くても雨からしっかりと守ってくれるサイズであり、力強いファッションを好む方にもおすすめです。
さらに、このサイズの和傘は親子やカップルで一緒に使用することができるため、着物デートなどにも利用でき、ドキドキを感じられることでしょう。
ただ、このサイズの和傘は乾燥時で約700g、雨天時には約830gと重さがあるため、長時間使用する際には専用の傘袋を使用することがおすすめです。
近年では、伝統的な和傘に現代的なデザインや機能性を持たせた「モダン和傘」もあり、和装や洋装のアクセントとして新しいスタイルを楽しんでいきましょう。
和傘と洋傘の寿命は?
お気に入りの和傘を長く使い続けていくためには、使用後のメンテナンスが欠かせません。特に、和傘は使った後に乾燥させるといった一連の流れを行う必要があります。また、洋傘もしっかりと水気を拭き取るなどのお手入れをすることで、傘の寿命を伸ばすことができるのです。
ここからは、和傘と洋傘の平均寿命と、お手入れ方法を簡単にご紹介していきます。
和傘の寿命は長いと5年から10年前後
和傘の使用年数はお手入れ方法などによって変わっていきますが、和傘の愛用者の中には5年前後ほど利用している方が多くいます。また、お手入れや丁寧に扱うなどを長く続けていくことで、10年ほど使用し続けることができます。
和傘は、製作の工程で素材である和紙に油が塗られているため耐水性があり、雨に濡れることで和紙が糊とともに固まり、使うほどに丈夫さを増していきます。
ただ、経年劣化などによって和紙が破れてしまうこともあるため、日頃から湿気を避け、風通しの良い場所で保管して、和傘の寿命を伸ばしていきましょう。
和紙が破れてしまっても修理を依頼することで、さらにお気に入りの和傘への愛着も深まっていきます。
【和傘の簡単お手入れ方法】
①シャフトを持って水を切る②タオルで優しく水を拭き取る
③陰干しをして乾燥させる
④湿気がない暗い場所で保管
⑤定期的にチェックする
洋傘の寿命は3年から4年前後
洋傘の寿命は、平均で3~4年が買い替えの目安とされています。洋傘の骨組みが曲がってしまうほか、布地が痛んでしまったときが買い替えの目安です。
ただ、和傘と同様に使用頻度や保管の状況によって寿命も変わってくるため、お気に入りの傘を持っている方は、お手入れを日常的に行っていきましょう。
【洋傘のお手入れ方法】
①傘を水・ぬるま湯で濡らす②中性洗剤を使い、スポンジで汚れを落とす
③しっかりと洗い流す
④風通しの良い場所で陰干しをする
植物油について
和傘の植物油について
和傘は、日本の伝統を象徴する伝統工芸品として有名ですが、その魅力を持続させていくためには植物油が欠かせません。
特に雨の日に使用される和傘には、天然の植物油が塗布されており、これが和傘の防水性や耐久性を支えてくれています。
一般的な家庭で馴染みのある植物油としては、大豆油やゴマ油(半乾性油)、オリーブ油や菜種油(不乾性油)が挙げられます。
しかし、和傘に用いられるのは「乾性油(かんせいゆ)」と呼ばれる植物油です。この乾性油は、空気中の酸素と反応して硬化する特性を持ち、和傘に適した高い防水性を発揮します。
代表的な乾性油として、亜麻仁油(あまにゆ)、荏油(えあぶら)、クルミ油、桐油(とうゆ)などがあり、これらは塗布後に酸素と結合して酸化重合を起こし、耐久性のある薄い膜を張ってくれます。
この膜が和傘を湿気や雨から守ってくれるほか、和紙特有の柔らかい手触りを保ってくれているのです。
このように乾性油は、和傘の寿命を延ばしながらその美しさを長く保つために欠かせない存在です。
和傘に植物油を塗るメリット4選
ここからは、和傘に植物油を塗るメリットについてお伝えしていきます。
①自然由来で安全性が高い
植物油は天然素材であるため、環境や人体への影響が少なく、古くから伝統工芸に多く使用されていました。
植物油は毒性が低いことから、艶を出すために家具などにも使われており、漆器にも利用されています。
このように植物油は、イメージしにくいものとして扱われますが、実は私たちの日常生活に欠かせない存在です。
②保護・防水効果
植物油を紙に塗布することで、乾燥後に強力な保護膜が形成されます。
この保護膜は、湿気や水分、さらにカビの侵入を防ぐ役割を果たし、紙の耐久性を大幅に向上させてくれます。
和傘に植物油を塗布することで防水効果が発揮し、雨の日も和傘の美しさを感じることができます。
③自然な美しい艶出し
和傘に植物油を塗ることによって、美しい艶が生まれ、和紙や竹など自然素材の質感を引き立てる効果があります。
植物油は乾燥後に素材をしなやかに保ってくれるので、和傘の開閉部分の摩擦を軽減し、スムーズな開閉を行い続けることができます。
④時間とともに馴染む経年変化
植物油は酸化を通して変化するため、年月とともに工芸品に味わい深い色合いや風合いを生み出してくれます。
「経年劣化」と聞くと悪いイメージがありますが、使用感が増すことによって和傘の美しさに磨きをかけ、自分だけの味わい深い一品に仕上がります。
植物油を塗るデメリット
ここからは、和傘に植物油が塗ってあることのデメリットをお伝えしていきます。
①臭いが気になってしまうことがある
植物油は天然素材のため、日常生活であまり嗅ぐことがないニオイを感じることがあります。和傘はインテリアとしても人気のため、室内で利用されるとそのニオイが気になってしまう可能性もあるのです。
しかし、和傘を陰干しすることによって徐々にニオイが薄らいでいくため、ニオイが気になる方は、最初に陰干しをすることがおすすめです。
②植物油の酸化で黄色く変化する
植物油は酸化をすることによって、徐々に黄色く変化していく特徴を持っています。特に、白色の紙を使った和傘の場合、その色合いの変化が顕著に現れることでしょう。
しかし、植物油によって「時間の流れとともに色合いが変化していく」と考えていくと、和傘に対しての愛情も生まれていきます。
※弊社では、販売状況を加味しながら随時自社で植物油を塗っております。
白色の傘は特に、塗りたての白い状態でお届けすることを心がけております。
油の塗り立ての和傘はニオイが気になる方もいらっしゃるかと思いますが、陰干しすることによる空気をいれることで、徐々に酸化が進みニオイが消えます。
また、昔は、酸化が進んだ傘(黄色みがかった和傘)が主流だったため、年代によって番傘の色の認識が異なる場合がございます。
昔の番傘の色をご希望の方は、お気軽にお問い合わせください。
③時間が経つことで強度が劣化していく
油を塗布することで形成される塗膜は、経年とともに酸化重合によって硬化します。この硬化は、和傘の構造において意外な影響を及ぼすことがあるのです。和傘は洋傘と同様に開閉を繰り返すことが前提ですが、撥水性の布地を使った洋傘とは異なり、植物油を塗った紙は硬化してしまいます。
硬化した和紙は柔軟性を失うため、開閉を繰り返すことで折り曲げ部分が脆くなり、「ピリ」(裂け目)が生じることがあります。
この現象は、プラスチックを折り曲げると割れてしまうように、硬くなった紙は、繰り返しの動作で徐々に劣化していくのです。
また、植物を塗布した紙は紫外線や温度変化の影響を受けやすく、塗布していない紙と比べて劣化が早まる傾向があります。
こうした植物油の特性を理解し、和傘の取り扱いや保管方法を工夫することが、長持ちさせるために大切です。
植物油を塗らない和傘がなぜあるの?
ここまでの内容で、植物油を塗るメリット・デメリットを挙げてきましたが、
ここで少し「なぜ植物油を塗らない傘があるのか」について触れていきたいと思います。
まず、植物油を塗らない和傘の大まかな分類としては「雨の日の使用を想定していない」傘となります。例えば、七五三用の和傘(唐傘)や日本舞踊のお稽古用の和傘などです。
日本舞踊は主に屋内で行われることが多く、七五三撮影は雨の日に屋外で行うことは着物などが汚れる恐れがあるため、基本的には控えられています。
そのため、水に濡れることを想定していない場合、和傘に植物油を塗っていない製品が主流なのです。
※先ほどご紹介した植物油のメリットとデメリットを踏まえ、弊社では油を塗る和傘と塗らない和傘を選定し販売しております。
原則として、雨の日にご使用になられない場合は、油なしの和傘(唐傘)をお買い求めください。現状、油を塗っていない和傘も油引きはできますので、ご用途によりご希望の方はお問い合わせください。
最後に
和傘に塗る油は、気温・湿度・日射量等の影響により大きく乾燥(酸化)が左右されるため、季節に合わせた植物油の調合比率を変更しております。
また、弊社ではロットごとに検査を行っているため、満足いく商品のみをお客様にお届けできるように努めております。
今ではなかなか手にする機会が少なくなった、天然素材で丁寧に作られた和傘は、時間の流れを一緒に刻むことができる特別な一品です。
和傘を日常に取り入れ、伝統と自然のぬくもりを感じながら、あなただけの風合いに育てていきませんか。
和傘の魅力
お土産やインテリアにも?和傘の魅力についてご紹介します
和傘というと、みなさんは何を思い浮かべますか?和傘はワンランク上の、装飾品・贅沢品というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
日本文化の中でも、和菓子や着物など今でも存続しているもの、一方で時代の流れとともに消えてしまったものなど様々あります。和傘に関してはどうでしょう。日常で目にする機会は少ないと言えますし、伝統工芸品という位置づけになるほど珍しいものとなりました。
そんな中、和傘はその技術や美しさから、インテリアなど別の活用がされている、海外の方からも注目されるなど、実用品としての役割以上に魅力があります。今回は、そんな「和傘」の魅力についてご紹介します。
和傘とは
雨が降ったときに私たちが普段からよく使用しているのは、和傘ではなく洋傘です。洋傘の骨組みは金属で作られていて、素材は木綿をはじめ、ナイロンやポリエステル、絹など、防水加工に優れた生地が使用されている製品が多いです。
それに対し和傘の骨組みは、竹素材で作られています。骨組みに和紙を張って、表面には油を染み込ませることで防水性を持たせています。洋傘が日本で普及し始めたのは明治時代に入ってからで、それ以前は和傘が一般的に多く用いられていました。
・和傘の魅力
古都を楽しむ小旅行など観光地でよく着物の体験をお見かけします。ちょっとブルーになってしまう雨天時にも和傘は非日常を演出してくれます。
和傘の魅力1:見た目の美しさ
開いた瞬間に、パッと広がる美しい空間。外側と内側で色の出方が異なり、光を通すとその違いがわかります。この色の違いも和傘の楽しみの一つ、和紙にしか表現できない光の拡散がきれいです。色合いもカラフルなものから様々な模様、見ているだけでも飽きません。
和傘の魅力2:五感で楽しむ
和傘は艶やかさカラフルといったように目で見て楽しませてくれますが、それだけではありません。
和紙に落ちるぱらんぱらん、という雨音。和紙に塗った天然由来の油の香り。音や香りもいつもと違った感覚で楽しませてくれます。
和傘の魅力3:自然と綺麗な立ち居振る舞いに
大事に丁寧に扱いたいという気持ちから、自然と所作や立ち居振る舞いも美しくなります。持つだけで凛とした仕草にさせてくれる、和傘にはそんな力があります。
和傘の魅力4:持っているだけでコーディネートのポイントになる
すれ違う人々の視線を感じて、ちょっとした優越感を味わうのもいいかもしれません。
また着物は気軽に着られませんが、洋服でも和傘を持っているだけでコーディネートのポイントとなり、コミュニケーションのきっかけにもなりそうです。
和傘についてのあれこれ
和傘についてのあれこれ
古くから日本にあるものですが、意外と歴史や構造についてご存じの方は少ないと思います。ここでは和傘の概要についてご説明します。
・和傘の歴史
日本書紀によると、百済の使者達が渡日本に渡った際の外来品に、蓋(きぬがさ)が含まれており、この蓋こそが、日本の「傘」のはじまりだったと言われています。しかし、この時に渡来した蓋は、雨が降った時にさすためのものではなく、日傘として使われていました。また、閉じたり開いたりすることはできず、常に開いたままでした。
当時の貴族にとって、傘は権威の象徴であっただけでなく、魔除け効果があると信じられており貴重なものでした。
その後、江戸時代に入ると、製紙技術の向上や、竹細工の技術を取り入れたことによって大きく変化を遂げます。現在、一般的とされている開閉が可能な傘は江戸中期頃に作られるようになりました。
歌舞伎の小道具として使われるようになったり、医者や僧侶が使用するようになったりしただけでなく、一般の人々にも幅広く普及しました。関西から江戸、全国に伝わったのち武士の内職としても製造されていました。
この頃の美人画には、江戸美人が和傘を持ち微笑む姿が多く描かれているのが特徴です。持っている和傘を見るだけで、その人物がどのような身分であるかが分かるとされていたほどです。
しかし、庶民の日用品として日常的に使用されていた和傘も、明治以降は時代の移り変わりと共に徐々に使用する機会はもちろん、目にする機会も減ってしまい、現代では伝統工芸品といったイメージの特別なものになっていきました。
・和傘の主な生産地
現在の和傘の生産地トップ3は、岐阜県、石川県金沢市、京都府です。この3県以外にも、みま傘で有名な徳島県、伊賀傘で有名な三重県など、さまざまな地域で和傘が今でも生産され続けています。
・和傘の構造・工程
洋傘の骨組みは6本または8本が多いです。一方和傘は、少ないもので16本、多いものでは48本の骨組みで作られている場合もあります。骨組みの数を見れば一目瞭然ですが、構造上は和傘のほうが丈夫であるといえます。
和傘の骨組みには和紙が張られているため、多くの方は洋傘に比べて雨に濡れて大丈夫なのか?壊れやすいのでは?というイメージを持たれているのではないでしょうか。イメージとは裏腹に、実際の和傘は非常に丈夫で、和紙の上から油を塗っているため、雨で濡れるほど丈夫で固くなっていくのが特徴です。濡れて、乾かして、を続けていくと耐久性が増していくのです。
和傘は、昔は十数人の職人で分業することでひとつの傘を作り上げていました。しかし現在は、和傘職人の数が激減しているため、すべての工程を一人の職人が行うことが増えています。和傘作りは、「骨組み」からはじまり、「和紙張り」、「色・漆塗り」、そして「仕上げ」という大きく4つの工程で進められます。
和傘の種類
和傘の種類
一見同じように見える和傘ですが、用途やデザインの異なる複数のタイプがあります。
先に紹介する「番傘」と「蛇の目傘」は、防水加工を目的に骨組みの上に張った和紙に油を塗ります。次に紹介する「和日傘」は和紙に油は塗りません。防水加工が施されていませんが、和紙本来の色を楽しめるのが魅力です。最後に紹介する「舞傘」は、和紙が張られているものもあれば、絹などの効果な布が張られているものもあります。
・番傘
「番傘」の特徴は、何といっても淡色でシンプル、がっしりとした見た目で骨太な作りです。太く重いため、男性が持っているイメージです。宿泊施設などのまちのお店の前に貸し出し用として置いてあり、そこに必ず屋号と番号が書かれていたため番傘と呼ばれるようになりました。
・蛇の目傘
エレガントで華やかな作りが魅力の「蛇の目傘」は、番傘と比べ蛇の目傘の方が細く軽いところが特徴です。工夫が見られる蛇の目傘は、持ち手部分に籐が巻かれています。蛇の目傘は番傘に比べると色柄が美しいことが特徴で、主に女性が持っているイメージです。蛇の目傘とは、傘の真ん中の白い円が蛇の目に見えることから名付けられました。
「舞傘」は、主に舞踏用に使用されるものです。防水加工が施されていないため、こちらも雨傘としては使用できません。和紙本来の色や模様を楽しむことができ、見た目にも美しい傘が多いのが特徴です。とても軽く作られているため、長時間傘を差していても疲れにくいです。日傘としても利用可能です。和紙のものもあれば、高価なものは絹を使用しているものもあります。着物の柄を邪魔しないよう、派手なデザインではなく、舞の小道具として引き立つように作られています。
・野点傘
他の和傘に比べてサイズが大きく、自力で立たせることができない和傘が「野点傘」です。存在感のある和傘で、野点傘を支えるために傘立台などを用います。
また茶道の時に使われる本式野点傘や、神社仏閣の行事などで使われる妻折野点傘など用途も別れます。現在の主流は妻折式(親骨の端が傘内側に曲がっている)の方が多いです。
和傘の使い方
和傘の使い方
和傘は決して安いものではありません。長く使い続けるためのポイントをご紹介します。
・和傘の持ち方
和傘の持ち方は洋傘とは異なります。洋傘は柄を持ち差しますが、和傘は柄の部分を下にして、『合羽』といわれる頭頂部分を持って差します。通常、合羽を持つと傘が広がらないようにできており、ぶら下げられるように合羽に紐がついているものもあります。
和傘の竹を束ねた要となる部分を「ロクロ」といいます。合羽がかぶさるところに「ロクロ」が入っており、この部分が衝撃で破損したり腐食したりすると修繕ができなくなります。傘を立てかけるときは、同じように柄を下して立てかけましょう。
・和傘の差し方
傘の絵柄を多く見せるために、写真撮影などでは歌舞伎役者のように斜めに持った差し方を多く見かけます。和傘を持ち慣れていない人にとっては、ずっしり重く感じられるため肩で支えがちになります。しかし、和傘はまっすぐに差さないと雨が滴り落ちてきて洋服着物が濡れてしまいます。芸妓・舞妓さんが和傘を持っている様子を見ると、必ず柄は肩にかけずにまっすぐ持っていることがわかることから、柄をまっすぐ持つことがマナーです。和傘は、顔から少し離したところで柄の下の部分を持ち差すと顔色が美しくみえます。
・和傘を使用する際の注意点
1.強風や降雪の時は注意
風にあおられると、まっすぐ骨が伸びている和傘はより壊れやすくなります。また、雪の日は和傘の上に雪が積もってしまい、その重みが原因で和紙が傷む原因となります。和傘の一部(蛇の目傘)は二段階に開くようにハジキ(止具)と呼ばれるパーツがついています。和傘を少しすぼめた状態で使うと、強風を避けたり雪が滑り落ちやすくしたり、といった対策ができます。
2.雨傘は直射日光に長時間さらさない
雨傘は油を敷いているため、光を透過してしまいます。UVカット効果がないため、番傘や蛇目傘の雨傘は日傘としての利用はお勧め致しません。雨傘に太陽の光を当てると、和紙に塗った油が黄ばみ劣化してしまいます。
・和傘のお手入れや保管について
1.使った後のお手入れ
濡れている傘の頭の部分を握るときは強い力を入れず、水気はタオルなどを使って軽くふき取りましょう。半開きにして、直射日光の当たらない陰干しで乾燥させます。その際も頭を必ず上にし、下に雑巾を敷いて立てかけておくと雨水を吸ってくれます。防水加工が施されていない日傘は雨非対応のため、濡れてしまった場合は完全に乾かし、閉じる前に紙の折り目を優しく直した状態でたたみましょう。
2.使わない日の保管法
風通しの良いところで保管しましょう。湿気の多いところでは、カビがはえる恐れがあります。しばらく使用していないと油が固まってしまい、和紙と和紙がくっついて離れにくくなる場合があります。
3.もしも穴が空いてしまったら
和紙が少し破れた程度であれば、小さい和紙を貼って塞ぐことができます。また購入したところが修繕対応可能であれば和紙の貼り替えを行うことにより長く使う事も可能です。ただし、和傘は特別な場合(祭事用等の取替ができないもの等)を除き、傘布を剥ぎ張り直しを行うため、生産以上の時間がかかりますので、その分コストも高くなります。修理は同じものを購入する場合の1.5倍から3倍費用、納期がかかる可能性が高いです。
・和傘専用の傘袋もおすすめ
和傘は、コンビニなどの傘立てに入らないだけでなく、商業施設などに入る際にあるビニールの傘袋には入りません。そんな時に便利なのが、専用の傘袋です。取手がついているため、手が塞がらず持ち運びができます。
正しく丁寧に取り扱えば、長持ちします。もったいなくて使えないといった方もいらっしゃるかと思いますが、ただしまっているだけでも自然素材ですから少しずつはどのみち劣化はします。せっかくなので自身のお気に入りの逸品を手に入れどんどん使っていってほしいというのが職人さんの想いなのではないでしょうか。
和傘の今後の展望
和傘の今後の展望
和傘の文化を残すことはもちろん、最近はその美しい見た目と機能性、環境に優しいという点などから、本来の雨傘としてだけではなく、ランプシェードなどの装飾品やインテリアとしても技術が取り入れられています。職人不足により、一時存続の危機を迎えたこともありましたが、和傘業界を盛り上げていきたいという若者が弟子入りすることも増えています。また修繕して使えるところも、サステナビリティであると言えます。
海外から見る日本の和傘
ジャパンクオリティが光る和傘の魅力は海外の方からも注目されており、お土産などにも人気が高まっています。その理由は日本における傘の品質の良さと種類の多さです。実際に使用する他にもお土産やインテリアとして購入される方も多いそうです。
今はまだコロナ禍により観光地は厳しい状況にありますが、徐々に海外からの観光も緩和されつつあります。海外ファンを増やし日本の技術のさらなる発展につながっていってほしいです。
和傘の魅力についてご紹介して参りましたが、いかがでしたでしょうか。特別な機会だけではなく、ぜひ身近なアイテムとして取り入れてみてください。
お土産としての和傘から、実用的な和傘やインテリアまで、現代の和傘を楽しみましょう。
和傘について種類から発祥まで解説|和傘・野点傘の通信販売なら恭雅にお任せください。
和傘発祥の地はタイ・ベトナムなどで、そこから中国を経て日本に伝わり、日本独自の製作方法の確立を経て「和傘」が普及しました。中国の唐からの伝来なので、唐傘(からかさ)と呼ばれるようになりましたが、それまでの雨具はかぶり笠のみでした。昨今、和傘の製造は、その発祥の地に帰りつつあります。弊社では、海外に和傘製造生産を依頼し、製作しておりますので、人件費及び材料費を抑えることにより、お客様にお求めやすい価格でご提供いたしております。
当店和傘の特徴は、まず第一に日本式の竹骨組みの傘であること。
唐傘(中国式傘)は親骨に小骨を差し込む「作り」であることに対して、和傘の「作り」は、親骨を小骨が挟みこむように作られております。親骨を差し込む「作り」の唐傘(中国式傘)は親骨を太く製作しないといけないため、傘を閉じたときに親骨の数が少ないにも関わらず、太くなります。日本式傘(和傘)は親骨・小骨を細く製作できるため、傘を閉じたときに細く、軽くなります。しかしながら、親骨・小骨を細いため、唐傘(中国式傘)より強度が弱くなり、骨数を増やすことで強度を補っております。日本式(和傘)の「作り」は非常に繊細で、製作できる職人の数も非常に少ないのが現状です。
第二に、紙傘・絹傘・蛇の目傘・野点傘には飾り糸が紡がれており、外側の傘の模様だけでなく、内側の美をお楽しみいただけます。
■紙傘
紙傘とは日本舞踊、歌舞伎などに用いられる舞踊傘のことです。日本舞踊のお稽古用として製作されておりますので、ある程度丈夫につくられています。日傘として活用される方も多く、和服のお供には欠かせないアイテムです。洋装でのおでかけに和傘を差す方も増えているそうです。
紙傘の活用法として撮影用アイテム、店内・室内用インテリアとしてもご利用いただけます。
紙傘の尺4と尺5、絹舞日傘は持ち運び便利な継柄(棒が2本に分解できる)を採用しており、お客様の使いやすさを追求しております。
■絹傘
絹傘とは、絹を傘布として用いた舞踊用傘のことです。日本舞踊、歌舞伎などに用いられています。日本舞踊のお稽古用として製作されておりますので、ある程度丈夫につくられています。絹舞傘の活用法として撮影用アイテム、店内・室内用インテリアとしてもご利用いただけます。
■番傘
番傘とは、太い竹の骨に和紙を張り、その上に油を引いた実用的な雨傘のことです。蛇の目傘と比べ、骨が太く重量があり丈夫でがっしりとした印象から、主に男性の方に愛用されております。
高級旅館の貸し傘や和服のおともに利用されています。
■蛇の目傘
蛇の目傘とは、番傘と同じく雨天時に用いられる雨傘です。
傘を開くと蛇の目模様が現れることが特徴で、番傘に比べ軽いことから舞踊に用いられることもあります。比較的重量が軽いことから、主に女性の雨傘として愛用されています。
実用的な面から和服のおともに使用されたり、結婚式での和装小物として活用されます。
野点傘について
和傘発祥の地はタイ・ベトナムなどで、そこから中国を経て日本に伝わりました。中国の唐からの伝来なので、唐傘(からか
さ)と呼ばれるようになりましたが、それまでの雨具はかぶり笠のみでした。昨今、和傘の製造は、その発祥の地に帰りつつあります。弊社では、中国傘職人に
和傘製造を依頼し、製作しておりますので、人件費及び材料費を抑えることにより、お客様にお求めやすい価格でご提供いたしております。
日本製の和傘と同じく、和傘製造は手作業のため工場及び職人により和傘の品質は大きく異なります。
弊
社は、長年卸業者として問屋・小売店・業者様へ和傘を卸しております。和傘で有名な販売業者のお話を元に、ただ既存の和傘のみを入荷するに留まらず、品質
を向上化を計るため、中国工場と連携を密にし、弊社特注の和傘製造を依頼しております。弊社では、お客様に満足いただける価格・品質を追求しております。
■野点傘
野点傘(野立傘)は野点(屋外で茶または抹茶をいれて楽しむ茶会)の席で使用される傘のことです。屋外でお茶会をする際、インテリアとして野点傘を用いることにより日本古来の風情を一層味わうことができるのではないでしょうか。他の用途としてお花見・屋内ディスプレイ・店舗用ディスプレイなどにも用いられています。
現在では、国産の野点傘はほとんどなく、輸入品が9割以上を占めていると考えられます。野点傘に関しては輸入品の品質は比較的高く、あまり生産されていない国産と比べても品質はさほど大きく変わらないという話もあります。
- 2023.12.26
- 16:27
和傘照明のススメ
和傘の活用法として、この度簡単に作れる和傘照明を提案したいと思います。
今回使用したのは「紙舞日傘 尺4 桜渦 白地ピンク」、電池式照明(和を引き立てるために電球色をお勧めします)です。
継柄の部分のネジを取り外し、角度を調整しながら立てかけます。その下に照明を灯すのみです。
注意点として、
①紙傘のため、雨に当たらない場所に設置すること。
②風が強い場所では、傘を固定すること。また、傘の開き具合を固定するため、棒とロクロの隙間にセロテープ等を使用し接着するか割り箸等で滑らないようにすること。
③紙を直接照明器具に触れさせないこと(火災防止)。
今回は紙舞日傘を仕様しましたが、番傘や絹傘等を用いることも可能です。
一般の照明器具と一味違った和傘照明を手軽に作れますので、ご興味のある方はぜひ試してみて下さい。